東日本大震災による、住宅ローンなど個人の借金について、今日から債務免除の受け付けが始まります。
ただ、ガイドラインによると、「安定収入がある人は対象ではない」 等といった大きな障害があるため、住宅ローン問題において救える方は今の所限定的のようです。
<東日本大震災>「二重ローン」問題対策 ようやく始動
毎日新聞 8月17日(水)20時14分配信
東日本大震災で被災者や企業が既存の借金に加えて新しい借金を抱える「二重ローン」問題の対策がようやく始動する。住宅ローンなど個人の借金については、「私的整理ガイドライン」に基づく債務免除の受け付けが22日から始まる。また、被災企業の債権を買い取る機構も9月以降、岩手県や宮城県など被災県に設置される。私的整理ガイドラインは、与野党協議で策定が決まり、全国銀行協会の研究会が7月に具体的な方策をまとめた。通常なら債務免除は自己破産扱いとなり、新たなローンを組めなくなったり、クレジットカードを作れなくなるが、ガイドラインに従って債務免除を受ければ、記録が残らずに新規ローンを組めるなどのメリットがある。借金のうちどれだけ免除するかや、残る借金の返済計画などは、弁護士や会計士らで構成する第三者機関「運営委員会」と協議し、資産状況などに基づいて算定する。
ただ、免除のハードルは低くはない。ガイドラインを策定した研究会座長の高木新二郎弁護士は「安定収入がある人は対象ではない」と説明しており、申請しても免除を認められない人が出る可能性がある。また、日弁連は対象を1万人程度と推計するが、金融機関がどれだけ免除に同意するか不透明で、「適用される人は限られるのでは」(地銀関係者)との指摘もある。このため、金融庁は免除実施状況の公表を検討している。
一方、被災企業の返済負担を軽減するため、企業に融資している金融機関から債権を買い取る機構は、中小企業基盤整備機構が8割、地域金融機関などが2割を出資して、被災県ごとに設立する。当初はそれぞれ数百億円程度の資金枠を設けて、足りなくなれば積み増す予定だ。
被災地3県で支援が必要な債権は計1兆円を超えるとみられる。政府・民主党は野党案を受け入れ、債権の買い取り対象を当初案の商工業者などに加え、農林漁業者などにも広げたが、どこまで救済できるか不安が残る。買い取り額は「簿価の5割程度」(民主党議員)などで調整しているが、残額は金融機関に債権放棄を求める可能性があり、その後の新規融資が円滑に行われるかも課題だ。
支援対象を増やせば不良債権が膨らむ懸念もあるため、支援先企業が再生できるかの見極めが重要になる。企業の抜本再建には、地域のノウハウを持つ被災した地域金融機関が、機能を回復することが不可欠となる。【田所柳子】
個人債務者の私的整理に関するガイドライン (PDF 11P)