住宅ローンを支払えなくなった方は、任意売却という手続きで、住宅を売却するケースが増えております。 それではこの任意売却とは、どのような手続きなのでしょうか? 通常の不動産売却とは何が違うのか、はじめての方でもわかりやすいように簡潔にまとめましたので、参考にしてください。
1、任意売却とは
- 不動産を売却する際は抵当権の抹消が必要
- 不動産を購入する際、ほとんどの方は住宅ローンを組まれますが、債権者(金融機関)は、融資の担保として、購入された不動産に抵当権を設定し、返済が滞った場合の保険をかけるのです。抵当権がつけられた不動産を売却するためには、この抵当権を抹消する必要があります。
- 抵当権を抹消するためには
- 抵当権抹消のためには、住宅ローンの残額をすべて返済しなければなりません。売却(予定)価格が住宅ローンの残高よりも高ければ、売却資金で住宅ローンを返済すればよいので売却可能ですが、売却価格が住宅ローンの残高以下の金額でしか売れない場合(オーバーローンといいます)、売却しても残債全額を完済することができません。不足分を手出しのお金で補うことが出来れば、抵当権を抹消してもらえますが、お金がなければ、抵当権を抹消してもらえません。つまり、毎月の住宅ローンが支払えないから売却しようとしても、抵当権が抹消されないため、売却する事もできないのです。
- 住宅ローンが残ったまま抵当権を抹消してもらうのが任意売却
- 住宅ローンを支払えない、売却もできないという状況が続けば、競売になってしまいます。そうなれば、時間もかかり、安値で落札される可能性もあります。そこで、不動産を競売になる前に、債権者とあなた(債務者)の合意の上で、一般市場において売却する手続きが「任意売却」なのです。
住宅ローンを払えない理由
- 「給料、ボーナスが減って住宅ローンの支払いが出来なくなった」
- 「リストラになった」
- 「事業が上手くいかなくなった」
- 「体調を崩した」
- 「離婚した」
このように様々な理由で、住宅ローンの支払いが困難になる方が急増しています。もし本当に、マイホームを手放さなければいけないとしたら、出来るだけ高く売却して、借金を少なくしたいですよね。
任意売却と競売の比較
任意売却 | 競売 | |
---|---|---|
売却価格 | 市場価格に近い金額 | 市場価格の7~8割 |
残債務 | 話合いにより任意売却をしているため、残債務についても寛容なことが多い | 話合いがもたれないまま競売手続きになっているため、支払督促を経て強制執行されることが多い |
期間 | 競売手続より短い | 申立てから開札まで半年以上 |
引越し代 | 頂けるように交渉可能 | 引渡命令による強制執行のため、ありません |
引渡しの相談 | 売買契約の前段階で協議をして決める | 強制執行のため、基本的に話し合いはありません |
もう少し詳しく知りたい方は、「任意売却と競売とではどちらがよいのか?」のページを参照ください。
2、任意売却の流れ
2-1、ご相談
ローン残高、ローン滞納期間、連帯保証人の有無、物件の住所を、お知らせ下さい。個人情報を伏せての相談でも構いませんが、具体的な内容をお知らせいただいたほうが、あなたにあった正しいアドバイスができます。
2-2、専任媒介契約の締結
当社に売却を依頼しようと、お決め頂きましたら「媒介契約」を締結いたします。債権者(抵当権者)と交渉することができるようになります。
2-3、債権者、抵当権者への連絡
債権者(抵当権者)へ専任媒介契約書を郵送し、任意売却について同意を得ます。債権者によって対応が違うので、代表的な3パターンを以下に記します。
- a、販売価格を指示してくる債権者
- 「その販売価格であれば抵当権の抹消に応じますよ!」という指示を頂ける債権者
- b、購入希望者が現れたら検討する債権者
- 具体的な金額を明示してくれないため、当社の査定金額1割程度増しの販売金額で販売活動をして、購入希望者が見つかった段階で、購入申し込みを債権者に送り稟議をあげてもらう
- c、全額返済出来ないのであれば、任意売却には応じない債権者
- 全額返済できる可能性があれば、やってみることは可能ですが、そうでない場合は申し訳ございません。残念ながら当社ではお話を進められません。
2-4、販売スタート
債権者と販売価格について話し合いが終わると、販売活動をスタートいたします。わずか数日で購入希望者が見つかることもあれば、半年以上かかることもございます。また、売主は債務超過の状態で不動産を売却するため、売却後に瑕疵が見つかっても、支払うことが出来ないことが多いのです。後々の紛争を回避するためにも、「瑕疵担保責任を免責とします」といった特約をつけさせて頂きます。
※ 賃貸中の場合は、利回りで金額を算出しますので、内覧できなくても構いません。しかし、ファミリータイプのマンションでは、利回りで計算すると、実勢価格とかけ離れて安くなることがあります。その場合は、立退きしていただかなければいけないケースもあります。
2-5、債権者の同意
購入者が見つかると、債権者に購入申込書、売買代金配分案を提出して、同意を得ます。即答の場合もあれば、稟議に数週間かかる場合もございます。この段階で、引っ越し代を認めて頂けるかどうかがわかります。
2-6、売買契約の締結
債権者の承諾がいただけましたら、不動産売買契約を締結いたします。物件に居住中の方は、基本的に売買契約締結後、引越しの手続きをして頂くことになります。
2-7、代金決済(不動産引き渡し)
売買契約締結より、基本的に約1ヵ月~1ヵ月半後に代金決済し、不動産の引き渡しとなります。代金決済とは、買主様よりいただいた売買代金を債権者へお支払い(返済)することです。ここからが本当の意味でのスタートとなるのかもしれませんね。
3、引っ越し代
「任意売却をすると引越し代いくらもらえるんですか?」
このようなご質問をしばしば受けます。もらえないより、もらえた方が良いですし、どうせもらえるのなら少ないより多い方が良いと思うのは、当然の事かと思います。ひと昔前であれば、任意売却をする際に引っ越し代は必ずお渡しできますと言えましたが、現在ではそこまで確約することは出来ない状況です。というのも、引っ越し代をあなたに渡すということは、返済にまわす金額が少なくなるわけです。1円でも多く回収したい債権者としては、住宅金融支援機構を筆頭に引っ越し代を認めない傾向が高まってきております。もちろん、当社としては全力で引っ越し代を認めて頂けるように交渉していきますが、ご相談の段階で確約できる話ではないということをまずご理解下さい。
そのうえで、「なぜ引越し代をもらえるの」「引越し代がもらえないケース」について解説していきます。
なぜ引越し代がもらえるのか
住宅ローンを滞納を繰り返して、任意売却でやむを得ずマイホームを処分しようと思い立っても、その段階では預貯金も底をついているでしょう。任意売却の手続きを行って購入者が見つかっても、引越しするお金がなければ不動産のお引渡しができません。つまり、任意売却が成立しないのです。そうなれば、その担保不動産を競売にかけ換価するという手続きに移行していきます。しかし、不動産競売では市場価格より安値で取引されることが多いため、回収金額が少なくなってしまうことが多いのです。また、競売申立から開札までおよそ半年はかかり、予納金も必要というデメリットもあります。
つまり、債権者も競売より任意売却で不動産を売却したほうが高値で取引でき、回収金額、回収率が高くなると考えており、任意売却の手続きにメリットを感じているのです。だからこそ、売買代金を全額回収して返済に回してもらうではなく、その一部を引越代として債務者(あなた)に渡すことを認めてくれるケースもあるのです。
ちなみに、引っ越し代がもらえるかどうか決まるのは、売買契約の前段階です。
https://ninbai.jp/menu/flow.html
引越し代がもらえないケース
購入希望者が見つかると、購入申込書、売買代金配分表を債権者に送っります。売買代金は適正かどうか、配分表に記載されている引っ越し代等の諸費用が適正かどうか等を検討してもらいます。
「この配分でOKです」という結論になれば良いのですが、「任意売却は認めますけど、引っ越し代は認められません」と言った回答を頂くことが、住宅金融支援機構を含め増えてきています。
その理由として
- 競売でも、引渡命令により立退きもスムーズで落札金額が高くなってきている
- 今まで住宅ローン払っていないんだから、引越代くらいあるでしょ
- 引越代を認める、認めないという公正さに欠くため
などなど色々ありますが、債権者が引越代を認めるべき合理的な理由が存在しないからです。
ただ、現実問題引越し代がなければ引っ越し出来ないという方もいらっしゃいます。最初からそういった相談を頂けましたら、法外な話はお断りさせて頂きますが、購入者に立退き料の援助を協力してもらうなど何らかの方法で引越代をお渡しできるように全力で取り組むことをお約束します。
4、残ったローン
任意売却では、代金決済(不動産引渡し)の前に、債権者と残債務の支払い方法について話し合いをします。本来なら、住宅ローンの残高を全額返済して、抵当権の抹消をしてもらうわけですから、全額返済出来ない状況であれば、残った債務の支払い方法について話し合いをすることとなります。
それでは、いくらくらいの支払いになるのかというのがポイントになります。一括でなんて支払えるわけありませんので、あなたが支払える金額、たとえば「月に3千円ならお支払い出来そうなんですけど。。」といった感じで債権者が希望している金額と、あなたが実際に支払える金額で話し合いをしていくことになります。お借入先が1社であれば、すぐに決まることですが、複数社からお借り入れがある方は、それぞれの債権者と話し合いをすることになります。
従って、経験、実績のある会社であれば、あなたに有利な返済方法になる可能性が高いのです。そして、その後はというと僅かながらですが返済を続けている方、一切支払っていない方、色々といらっしゃいますが、当社で任意売却をした方の多くは、自己破産されていません。自分の場合はどうなのかな? とお考えの方は、お電話ください。
当社があなたのお手伝いをできるのは、この代金決済(不動産引き渡し)までとなります。しかし、この残債務は、サービサーからサービサーへ債権譲渡される場合があり、
「○○サービサーから債権譲渡の通知が来たんですけど、どうしたら良いですか?」
といった相談も頂きます。マイホームを処分して、住宅ローンのことなんてすっかり忘れていた所に、「債権譲渡のお知らせ」といった通知が届けば、ビックリしてしまうことでしょう。あなたが困った時は、遠慮なさらずにご相談ください。
サービサーはバルクセールで債権額面より大幅に低い価格で譲受けていることが多いため、債務免除の交渉ができる場合も少なくありません。とにかく一人で悩まず、売却後であっても構いませんのでお気軽にご相談ください。
債務免除交渉については、不動産会社が交渉する話ではありません。具体的な交渉については、あなたが直接おこなうか、紹介する弁護士や司法書士の先生に依頼して進めることになります。
5、依頼先の探し方
住宅ローンが払えなくて、任意売却の相談をしようと思い立ったら、何からスタートしたら良いのでしょうか? アポなしで不動産屋へ行って「任意売却の相談で来たんですけど」なんて言える方はごくわずかだと思いますので、どういった選択肢があるのかを解説します。
5-1、近所の不動産屋さんに相談
不動産売買を取り扱っている不動産屋さんであれば対応してくれることでしょう。 ただし不動産を売却しても住宅ローンが残る場合、不足分をどう補うのかを聞かれます。
「それができないから相談に来たんですけど」
「不足分を用意できなければ、抵当権消せませんので売却なんて出来ませんよ!」
最近は任意売却という制度も浸透してきて、このように門前払いにあうケースは少なく、話くらいは聞いてもらえるでしょう。何もしないより、まずは不動産のプロに相談に行くという行動をすることはとても素晴らしいことです。その行動が、未来の希望の光を導く一歩となります。
5-2、金融機関(債権者)から紹介された不動産業者に相談
住宅ローンを借入した金融機関から紹介を受ける不動産業者とは、こういったケースにも複数対応していると思いますので、任意売却の説明や手続きはスムーズでしょう。ただ、その業者とは、金融機関にとっては信頼できる業者であり、役員や、社員にその金融機関出身の人がいる場合もあります。天下りというやつですね。ダメだと言いたいのではなく、そういった側面もあるかもしれないということを認識したうえで、相談されることが大事です。
当社は、金融機関から任意売却をするために不動産査定や、媒介してほしいといった依頼を頂くこともあり、「金融機関から紹介された不動産業者」に該当することもございます。
5-3、任意売却を得意とする不動産屋さんに相談
得意としているわけですから、有力な相談先の一つになります。駅前の大手不動産業者では教えてくれなかったような事実を教えてもらえるかもしれません。
そして、実際に任意売却を依頼された場合は、2のケースより、あなたの意思を尊重しながら、スケジュールを組み、販売活動や残債務の支払い交渉を進める事が可能です。
依頼先を探すときの注意点
任意売却専門業者に相談して依頼すれば安全というわけではございません。 中には評判の悪い業者さんの話も耳にしますので、参考になればと追記いたします。
メリットばかり強調する会社
「引越し代を100万円渡せるように交渉しますよ」 「残債務なんて無い袖は振れないでしょ!放っておけばいいんですよ」 根拠のない説明で、自社に売却を依頼すれば全てハッピーになれるんだという業者さん。不動産の免許(宅地建物取引業免許)のない会社
不動産の売却ですから宅地建物取引業の免許が必要です。 問い合わせ先は単に相談窓口であり、提携業者を紹介するというケースもございます。 紹介された業者の力量次第ですね。にわか任意売却専門業者
わずか半日の任意売却セミナーに参加しただけで「任意売却のプロ」等と称して、他社のホームページをコピーしただけのホームページを作って、年間相談件数百件等という謳い文句。もうほとんど詐欺ですね。これら業者さんがすべて悪いわけではなく、結果的に満足されている方もいらっしゃいます。しかしその反面、依頼したけど話が違ってきて途中で依頼先を変更するケースもございます。 ですから、面倒でも複数社、せめて2社には相談してから依頼先を決めることをおすすめしています。
5-4、弁護士、司法書士に相談
この選択肢が最も安心できる方法だと思います。しかし、任意売却を依頼するとなれば、手続きは提携などしている不動産業者を紹介されることとなります。債務整理等も検討していて、その手続きは弁護士、司法書士に任せようと決めても、任意売却は、結局は不動産業者が行うのです。そのまま紹介された不動産業者に相談をして手続きを進めるのか、上記1~3に再度相談して依頼先を決めることになります。
任意売却の相談、依頼をするポイント
あなたにとってどこに相談するのが、一番良いのかを断定することはできませんが、相談する先は1社ではなく、複数社に相談をしてから依頼先を決めると、失敗する? 後で後悔する確率はぐっと減るでしょう。
お疲れ様でした。以上で、「はじめての任意売却」終了です。おおまかにご理解いただけましたでしょうか。 もう少し読みたいという方のために、下に「よく読まれているページ」をまとめましたので、気になる項目がございましたら、こちらも参考にしてください。